はけの森美術館

メルシー!はけ美20周年展 2026年9月12日から11月23日まで

メルシー!はけ美20周年展 2026年9月12日から11月23日まで

はけ美、20周年!

 この度、中村研一記念小金井市立はけの森美術館は2006年の開館から20周年を迎えることができました。当館は「はけ美」の愛称で親しんでいただけるようになり、コレクションの主軸は中村研一(1895-1967)という洋画家です。

 はけ美の歩みは、展覧会のみならず、ワークショップやギャラリートーク、鑑賞教室や職場体験、ギャラリーコンサートなどの活動を一緒に支えてくださるみなさまがあってこその20年でした。「メルシー!(フランス語で「ありがとう」)という本展タイトルには、フランス帰りの中村研一に成り代わり、みなさまへの感謝を込めました。

 本展の1階展示室では、これまでの歩みを、厳選した過去展と市民協働活動をパネルでご紹介しながら、各展覧会で展示された当館所蔵作品とともにふり返ります。

中村研一《早春》1962年
中村研一《早春》1962年

色鮮やかでキュビスムを思わせるやや奇妙な構図が印象的で、見る者を惹きつけます。

中村研一《木陰》1963年頃
中村研一《木陰》1963年頃

絵付けを思わせる装飾的な描かれ方の枝葉が印象的で、豊かな緑の表情が広がります。

修復についてもご紹介!

中村研一《長岡外史氏の肖像》1932年
中村研一《長岡外史氏の肖像》1932年

 1階では歩みをふり返るだけではなく、美術館の重要使命の一つである作品の「修復」についてもご紹介します。NPO法人 文化財保存支援機構(略称:NPO JCP)のご協力を得て、当館所蔵作品の修復の手順・様子をパネルにまとめ、近年修復されたばかりの《長岡外史氏の肖像》を展示します。

 また、当館における重要な調査研究対象として富永親徳(1896-1964:とみなが・ちかのり/しんとく)という、台湾で画業を開始した洋画家がいます。名前の読みは両方使われていたようで、親族からは「ちかのり」と呼ばれていましたが、サインはShintokと記され、画家としては「しんとく」と名乗っていたと考えられます。

 数年前、ご親族からまとまった富永作品のご寄贈があり、「富永親徳という近代洋画家がいた-記録と場所をたどる-」(2024年11月2日~2025年1月13日開催)という展覧会の開催に至りました。

 寄贈いただいた作品は100点を超え、まずは取り急ぎ、NPO JCPにクリーニング作業を行っていただきました。そのときの様子もパネルで紹介し、富永作品も8点展示します。修復工程の様子と、修復を終えた実物作品が同時に並ぶことはなかなかありませんので、この機会をぜひお見逃しなく!

2階にて同時開催「20周年だにゃ!」

作者不詳《猫人形》制作年不詳
作者不詳《猫人形》制作年不詳
©Shunta Inaguchi

 2階は同時開催で、「20周年」の「20」の「2」と「にゃ」をかけまして、中村研一の猫展を開催します。

 黒猫のふわふわした毛並みを墨の濃淡とにじみだけで表現しているものや、油彩で描かれたころころしたかわいい仔猫、猫の一瞬を素早く描き写す素描からは、中村の愛猫家の一面がうかがえます。

 また、今回初展示となる《猫人形》は、はけ美の前身・財団法人中村研一記念美術館時代からあるもので、普段は、イベント開催時にのみ開放される多目的講義室にあります。ワークショップ参加者、鑑賞教室で訪れる児童のみなさまからの「かわいい!」「飾らなきゃもったいない!」という数多くのお声をいただき、この度、2階展示室のゲスト的な存在として展示に至りました。中村の妻・富子さんがご友人から贈られた、ということ以外詳細は不明ですが、はけ美の守り神のような存在です。

藤田嗣治との交流

中村研一《富子猫》制作年不詳
中村研一《富子猫》制作年不詳

 2階の見どころとして挙げたいのが、中村と親しかった大の愛猫家・藤田嗣治(1886-1968:レオナール・フジタ)が描いた《研一猫》です。互いの家で酒を酌み交わすこともあった二人は、それぞれ擬人化した猫を描いています。藤田は中村を酔っ払い猫として描き、一方、中村はといえば、藤田ではなく、妻・富子さんを編物(裁縫)する猫として表しました。愛猫家の藤田による《研一猫》、愛妻家の中村による《富子猫》の夫婦猫はセットで展示しています。

藤田嗣治《竹製灰皿》1944年
藤田嗣治《竹製灰皿》1944年
©Shunta Inaguchi

 また、ほとんど展示されてこなかった藤田による《竹製灰皿》(1944年)も見どころの一つです。黄道十二星座のマークと謎のアルファベットが側面にぐるりと彫られた灰皿は、おそらく中村邸の庭(当館緑地)の竹から手すさびとして作られたものと考えられます。藤田は占星術に関心を寄せていたようですが、この灰皿に刻まれたアルファベットとの関連性については調査中です。絵画とはまたちがった藤田の趣をお楽しみください。