はけの森美術館

中村研一とモダニズム 第一期 モダニズム、出会いと展開

中村研一とモダニズム 第一期 モダニズム、出会いと展開

中村研一とモダニズム 第一期 モダニズム、出会いと展開 特集ページ

中村研一とモダニズム 第一期 モダニズム、出会いと展開 特集ページ

  洋画家・中村研一が生まれたのは明治28年(1895)。令和7年(2025)は生誕130年であることを記念し、
二期にわたって「中村とモダニズム」を探ります。第一期のテーマは「モダニズム、出会いと展開」。
こちらの特集ページでは中村と三人の女性との「出会い」を紹介します。

中村研一《フランス婦人像》1923年 油彩・カンヴァス 個人蔵

一人目の女性―きっと、パリで出会った貴女

一人目の女性―きっと、パリで出会った貴女

こちらの《フランス婦人蔵》、実は名前も分からない、謎多き女性です。 画面下部に制作年が記され、1923年とあります。この年の二月に中村研一はフランスに留学しました。この「フランス婦人」とはフランスに到着して間もなく、出会ったのでしょうか。 女性の背後は階段らしきものが見え、室内のようです。胸元がゆったりと開いた服は光沢のある黒い生地で、額を出したボブヘアーとあわせ、当時流行のアールデコ・スタイルを感じさせます。洗練された装いと、落ち着いた笑み。1920年代、狂乱の時代のパリジェンヌのイメージぴったりながら謎めいた女性を描いた本作は、当館では初展示作品です。
中村研一《フランス婦人像》1923年 油彩・カンヴァス 個人蔵
中村研一《フランス婦人像》1928年 油彩・カンヴァス 小金井市立はけの森美術館蔵

二人目の女性―振り返る「ターニヤさん」

二人目の女性―振り返る「ターニヤさん」

二人目の作品も、実はタイトルは一人目と同じ《フランス婦人像》です。こちらは1928年に制作され、モデルの名前は「ターニヤ」。ターニヤさんはひろしま美術館に所蔵されている裸婦像でもモデルをつとめています。 椅子に腰かけ、振り返る彼女。彫りの深い面差しには影が落ち、どこか寂しげなまなざしです。実は、1928年は中村が6年に及んだ留学を終え、帰国した年でした。この帰国が、中村とターニヤさん、画家とモデルの生涯の別れとなります。出会いがあるからこそ、別れがある――ターニヤさんは、無言のうちに何を思ったのでしょうか。
中村研一《フランス婦人像》1928年 油彩・カンヴァス 小金井市立はけの森美術館蔵
中村研一《北京官話》1940年 油彩・カンヴァス 小金井市立はけの森美術館

三人目の女性―生涯のモデル・妻、富子

三人目の女性―生涯のモデル・妻、富子

中村研一はフランスから帰国した1928年の年末、お見合いをします。相手は日本海軍少将・中村正奇の娘である富子。偶然にも同姓の二人ですが、この時が初対面でした。年明けに二人はめでたく結婚します。 以降、妻・富子は中村研一の作品の中で最も重要なモデルとして、戦後に至るまでたびたび様々な装いで描かれるようになります。こちらの《北京官話》では美しいチャイナドレスを着て、自宅アトリエのサンルームで微笑んでいます。 三人目の女性――富子夫人は、夫婦としても、画家とモデルとしても、中村研一と共に歩んだ存在でした。
中村研一《北京官話》1940年 油彩・カンヴァス 小金井市立はけの森美術館